- TESOLと応用言語学(Applied Linguistics)
- オーストラリアでTESOLが発達した背景
- オーストラリアのTESOLの特徴
- TESOLの種類
- TESOL、応用言語学のコースの種類
- TESOL、応用言語学コースで勉強すること(科目例)
- 留学前の留意点
- 英語教育関連おすすめ文献・図書
大学院などのコースを検索すると、TESOLと応用言語学という言葉をよく一緒に目にします。似ている部分もありますが、このふたつの違いは何か簡単に説明します。
応用言語学とは、言語学の理論と実践(つまり言語の習得)の関係を研究するための学問です。
言語学で研究されている理論を、実際に人間が言語習得の過程でどのように応用できるかを追求するため、
「効果的な言語習得法」や「言語教授法」に重きが置かれます。例えば外国語教育、翻訳・通訳、国語教育、識字教育なども応用言語学の分野に含まれます。
研究分野としては、語彙論、意味論、語用論、音声学、第1&第2言語習得理論、文法、言語リサーチ法などがあります。
TESOLはTeaching English to Speakers of Other Languagesの略称で、
英語を母国語としない人たち向けの英語教授法のことをいい、応用言語学の一分野と位置づけることができます。
実際に英語を教える際に持っておくべき言語理論の知識と実践的スキルを身に付けます。
言語習得理論などに加えて、例えばカリキュラム開発、教材開発、異文化間コミュニケーション、言語テスト法、文法、言語リサーチ法なども学びます。
大学院で学ぶ場合には、応用言語学専攻の学生とTESOLの学生が共通して履修する科目も多くあります。
オーストラリアは150国以上の国から移民を受け入れてきた歴史のある、多文化・多民族国家です。
英語圏以外からの移民たちが、オーストラリアで生活していくためには公用語である英語を使えることが必要となります。
そこで、新しい移民向けに子供から大人までの英語教育プログラムが開発されてきました。
大人向けには政府による成人移民英語教育プログラム(Adult Migrant English Program: AMEP 1949年発足)が、
子供向けには小・中・高校でのESL(English as a Second Language)クラスが提供されてきました。
現在では特に都市部で、学校に通う生徒のうち4人に1人は、英語以外の母国語を持つと言われています。
英語力不足が学力や学校生活に影響させないように、充実した英語教育が必要とされてきました。
1980年代初頭には国立カリキュラム教材センター(National Curriculum Resource Centre)と
国立英語教育研究センター(National Centre for English Language Teaching and Research: NCELTR、マッコーリー大学言語学部内)が設置され、カリキュラム、教員育成のための研究成果をあげています。
AMEP発足当初(1950年代初頭)より、移民のコミュニケーションニーズに焦点を当てた英語教育の必要性から、移民が英語を話す必要がある場面を特定し「具体的な場面に即した」カリキュラムが開発されてきました。授業はダイレクト・メソッド(英語で英語を教える)で、あくまで学習者のニーズに基づく学習者中心のアプローチ(Student
Centred
Approach)とカリキュラムが開発されてきました。「コミュニケーション」に重点を置くことにより、文法の学習の比重が軽くとらえがちになる傾向もありましたが、Systemic
Functional Grammar(体系機能文法)と呼ばれるMichael
Halliday教授(元シドニー大学)の研究により発展した文法の考え方が、大きくオーストラリアの英語教育に影響を与えています。 Syetemic
Functional
Grammarとは、5文型など文法規則や型よりも、テキスト(あるまとまった文章や会話)が持つ「意味」と「文脈」「機能」に注目しています。その文が、どのような文脈で、どうのような社会的目的があって使われているのかを重視します。 文法が独立した存在としてではなく、Systemic
Functional
Grammerをベースとしてスピーキング、リスニング、ライティング、リーディングそれぞれの力を伸ばすための統合的なカリキュラムが開発されています。例えば「ライティング」をメインとした授業にスピーキング、リスニング、リーディングも含まれ、トータルでターゲットとなる文法の学習ができるよう組み込まれています。始めに文法ありきでもなければ、丸暗記でもなく、テキストの内容・機能を学習者が認識することから学習が展開されていきます。
TESOLは以下のようにさらに2つに種類分けすることができます。
TESL(Teaching English as a Second Language)⇒「第2言語としての英語教育」 →例えば、非英語圏から英語圏の国へ移住した人たちに対する英語教育があげられます。
TEFL(Teaching English as a Foreign Language)⇒「外国語としての英語教育」 →例えば日本や韓国の学校教育での教科としての英語のように外国語という位置づけでの英語教育のことを指します。 オーストラリアでのTESOLコースでは、自分が置かれた英語教育の状況・現場に合わせてTESLまたはTEFLとして研究を進めることになります。
・語学学校、専門学校の英語教授法コース(4週間~10週間) ・専門学校でのケンブリッジ大学海外試験評議会(UCLES)認定CELTA/DELTAコース*(4週間) ・語学学校、専門学校でのCertificate
Ⅳ in TESOL(4週間~9週間)** ・大学学部 TESOL、応用言語学(Applied Linguistics)
(通常3年間) ・大学院レベル(以下) Graduate Certificat TESOL、応用言語学(Applied Linguistics)
(通常半年) Graduate
Diploma(通常1年) 修士号(1年~2年) *コースにより教員経験が入学条件になる場合もあります 博士号(3年~5年) *研究テーマを追求します
・第1、第2言語習得理論 ・カリキュラム開発、シラバスデザイン ・言語リサーチ ・言語テスト、評価法 ・文法、話法 ・音韻論 ・語彙論 ・意味論 ・言語と文化 ・言語と社会 ・音声学
コース選びに関しては、授業料やコース期間などの条件も重要ですが、内容をよく調べて他の学校のコースとの違いなども踏まえた上で選ぶことがポイントです。コースによって例えば実践重視のもの、理論重視のものや、ノン・ネイティブ用のコースなのかネイティブも一緒に勉強することになるのかなど、違いがあるので自分にはどちらが合っているのか、自分のこれまでの経験と将来のゴールとを合わせてコース選びをする必要があります。
日本ではより充実した英語教育の必要性が高まり、必然的に優秀な英語教師の需要が増えています。最近では海外留学経験を持ち、専門的な知識とスキルをもつ教師も増えてきました。しかしながら日本の英語教育の特殊性から、現実的にはオーストラリア(他の国であっても)で学んだTESOLをそのまま全て日本の教育現場で使えるというわけではありません。自分が英語を教える状況に合わせて応用させる必要はあるでしょう。例えば中学校や高校の英語教師の場合には、検定教科書の利用や受験との関連を考慮に入れた展開が求められるでしょう。
オーストラリアにはいろいろな国からの留学生が英語教育を学びに来るため、日本以外ではどのような英語教育が行われているのか、国の政策や文化背景による英語教育の違いなど世界の情報を知ることもできます。そして様々な立場から議論ができるので、視野が広がることも期待できます。また専門学校(コースによります)や大学院では、国内または海外で教えた経験のあるネイティブスピーカーと一緒に学習する場合も多く、ネイティブの立場とノン・ネイティブの立場から議論を交わすなど、積極的な参加により多様な英語教授観を交換し考えを深めることができます。
大学院でのTESOLコースの場合、教えた経験が2年以上あることが入学条件に含まれていることがほとんどですが、教えた経験のない人や学部では全く違う分野を専攻していた場合なども、Graduate
Certificateをまず履修し、順次Graduate DiplomaからMaster(修士号)へと進むことも可能です。
準備中
*CELTA=Cambridge
Certificate in English Language Teaching to Adults DELTA=Cambridge Diploma in
English Teaching to
Adults 両コースはケンブリッ大学海外試験評議会(UCLES)認定の成人英語教育資格です。DELTAはすでに教えた経験が豊富な人や現役教員向け。もともと英語ネイティブスピーカー用に用意されたコースなので高い英語力が求められます。
**Certificate Ⅳ in TESOL保持者は、800時間以上の英語教師経験またはDiploma in
Educationの資格を持つことで、NEAS(全国英語学校認定制度-National ELT Accreditation
Scheme)が定める英語教師資格の基準に達し、オーストラリア国内の政府認定語学学校(ELICOS認定校)で働く資格が与えられます。もともと英語ネイティブスピーカー用に用意されたコースなので高い英語力が求められますが、ノン・ネイティブスピーカーのために開発されたコースもあります。

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